アウトプットメモ

大豪院 邪鬼のメモです

鋼構造及びコンクリート 令和3年度 Ⅱ-1-3

※問題文及び正答は日本技術士会のホームページから確認してください。

解答例

1.高強度コンクリートの特徴的な性質
 コンクリート標準示方書では、設計基準強度50N/mm2以上のものを高強度コンクリートとしており、近年では圧縮強度400 N/mm2を超える無孔性コンクリートが実用化されている。
 高強度コンクリートは組織が緻密であるため、二酸化炭素や塩化物イオンなどの劣化因子の浸透に対して優れた抵抗性を有しており、水密性にも優れている。
 しかし、緻密な組織は火災によって高温にさらされると蒸発した水分の逃げ場が無く爆裂が生じやすい。
 水結合材比が小さいほど爆裂のリスクが大きく、爆裂した際の損傷も大きい傾向にある。
2.設計や施工における留意点
 設計時には、高強度コンクリートの中でも特に強度の高いものはせん断耐力が従来予測式より小さくなることに注意が必要である。これは、圧縮強度と比較して引張強度の増加量が小さいことや、骨材を貫通してひび割れが進展することによる骨材のかみ合いの減少が原因である。対策として、試験などによって個別にせん断耐力を把握することが必要となる。
 施工時には、温度ひび割れや高温履歴による強度不足に注意が必要である。高強度コンクリートは単位セメント量が多くなるため、水和熱が大きくなることが理由である。対策として、温度応力解析や、フライアッシュなどの混和材の活用が有効である。   以上

解説

この問題について

高強度コンクリートまたは高強度鉄筋についての設問です。
高強度鉄筋は単一の材料であることから技術士論文に書ける要素が少ないことと、高強度コンクリートは他のテーマにおいても活用出来るので高強度コンクリートについて回答例を作成しました。
高強度コンクリートについて、たとえばASR対策についての問題が出た場合は”高強度コンクリートでは単位セメント量が多くなり、アルカリ総量を抑えるのが難しい。そのため無害判定骨材の使用やASR抑制効果のある混和材を使用する。“と書くことができます。
また、コンクリート構造物の破壊形態について問われた場合は”超高強度コンクリートでは、せん断耐力の算出において従来予測式が使えないため、個別の試験などによって対応 する。”と書くこともできます。
その他にもここには書ききれないぐらい活用できますので、高強度コンクリートに詳しくなっておけば、引き出しを一気に増やすことができます。

1.高強度コンクリートの特徴的な性質について

高強度コンクリートの定義

技術士論文も論文ですので、前提条件を明確にするために高強度コンクリートの定義に触れています。
高強度コンクリートの定義については、土木ではコンクリート標準示方書【施工編】において、設計基準強度50N/mm2以上と示されています。
建築ではJASS5において36N/mm2以上とされているようなので、建築が専門の方はそちらを参考にしてください。
近年では圧縮強度が高いコンクリートが多く開発されていますが、活用実績の多いPFC(無孔性コンクリート)の圧縮強度400N/mm2以上について記載しています。

緻密な組織

緻密な組織がメリットとデメリットに直結しているため、最初に組織が緻密であるということを書いています。その後は流れでメリットとデメリットを書けばよいので、まとまった文章を作成しやすくなります。
文中で"水結合材比"という用語を使っていますが、これはコンクリート標準示方書にならっています。
コンクリートの用語は書籍や文献等によって定義が違うことが多々ありますが、土木が専門の方はコンクリート標準示方書を正としてください。試験官もコンクリート標準示方書の内容を不正解にはしませんし、色んな表現がある場合の正解を明確にすることで自信を持って回答することが出来ます。

2.設計や施工における留意点について

設計における留意点

構造的な考え方から、超高強度コンクリートのせん断耐力について記載しました。
その他には
・火害のリスクを考慮した設計
・施工性に配慮した配筋設計
というテーマも考えられます。
また、短繊維について書く場合、短繊維の使用自体は施工の範囲内と判断される可能性が高いので、この項目で書くのであれば短繊維を使用することによって生じる設計上の留意点を書いてください。

施工における留意点

高強度コンクリートは施工における留意点は豊富なので、特に困ることはないかと思います。
回答例に記載した水和熱以外にも
・アルカリ総量(ASR)
・自己収縮
・充填不良
などが考えられますが、自己収縮についてはメカニズムがかなり複雑で、説明するのが大変です。また、コンクリートの充填不良は当たり障りのない内容になりがちですので注意が必要です。
水和熱とアルカリ総量については、他のテーマの問題でも書きやすいので抑えておきたいポイントです。

参考

1) コンクリート標準示方書【設計編】(土木学会)

2) コンクリート標準示方書【施工編】(土木学会)

3) 世界最高強度を達成するPFC(無孔性コンクリート)の開発(太平洋セメントHP)

4) CEM'S(太平洋セメント