アウトプットメモ

大豪院 邪鬼のメモです

鋼構造及びコンクリート 令和元年度 Ⅱ-1-8

※問題文及び正答は日本技術士会のホームページから確認してください。

解答例

1.塩害における進展期及び加速期の特徴
①進展期
 塩害による鋼材の腐食開始から腐食ひび割れ発生までの期間を進展期という。
 進展期では外観上の変状は見られないものの、コンクリート中の塩化物イオン濃度が鋼材腐食発生限界を超えており、鋼材の腐食が開始している。
②加速期
 鋼材の腐食によってひび割れが生じ、劣化因子の侵入によって劣化速度が加速する期間を加速期という。
 加速期は前期と後期に分かれるが、鋼材の著しい断面減少は見られず耐荷力に大きな影響はない。
2.新設構造物における対策項目
①防錆鉄筋の使用
 エポキシ樹脂塗装鉄筋や亜鉛めっき鉄筋、ステンレス鉄筋などの防錆鉄筋を使用する。
②混和材の使用
 フライアッシュや高炉スラグ微粉末などの混和材を使用することにより、コンクリートの組織を緻密にすることで塩化物イオンの侵入に対する抵抗性を確保する。
③表面保護工法の使用
 表面被覆工法や表面含侵工法などの表面保護工法を行う。表面被覆工法を採用する場合は、モニタリング性が失われることに注意が必要となる。    以上

解説

この問題について

鉄筋コンクリートの劣化機構のうち、塩害についての問題です。基本的な問題なので必ず押さえておきましょう。
基本的な事項はコンクリート標準示方書【維持管理編】を参考にしてください。

1.塩害における4つのステージについて

問題文にあるように、塩害の進行度合いは潜伏期、進展期、加速期、劣化期に分けられており、これはコンクリート標準示方書に示されています。
それぞれの定義を簡潔に説明すると以下の通りです。
・潜伏期=鋼材が発錆していない
・進展期=鋼材が発錆しているが、外観上の変化はない
・加速期=外観上に変化が見られるが、耐荷力に大きな影響はない
・劣化期=耐荷力が減少している
問題では潜伏期以外の2つを選ぶようになっていますが、正確に答えられればどれを選んでも良いでしょう。

2.新設構造物における対策項目について

防錆鉄筋

一般的にはエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用することが多いですが、選定理由まで書くには文字数が足りないので3つの防錆鉄筋を列記しています。
仮に文字数に余裕があるのであれば、それぞれのメリット・デメリットとして以下を記載しても良いでしょう。
・エポキシ樹脂塗装鉄筋
採用実績が豊富だが、加工や運搬時にキズが付きやすく、キズの補修が必要。
亜鉛めっき鉄筋
多少キズがついても補修不要だが、高アルカリ性の環境では亜鉛めっき層が消耗するため、構造物の供用期間と亜鉛めっき層の消耗量を確認する必要がある。
・ステンレス鉄筋
高い耐食性を持つが、コストが高い。

混和材の使用

フライアッシュはポゾラン反応によって、高炉スラグ微粉末は潜在水硬性によって組織が緻密になり、塩化物イオンの侵入に対する抵抗性を得ることが出来ます。
フライアッシュ、高炉スラグ微粉末は共に重要なテーマですので必ず押さえておきましょう。

表面保護工法

表面保護工法には大きく分けて表面被覆工法と表面含浸工法がありますが、表面被覆工法はコンクリート表面の状態が見えなくなる(モニタリング性が失われる)ことに注意が必要です。
表面含浸工法はコンクリート表層部の組織を改質することで劣化因子の侵入を抑制します。構造物の外観を変えず、モニタリング性を確保することができますが、劣化因子の遮断効果や耐用年数は表面被覆工法に劣ります。

新設構造物における対策項目としては、その他にも
・施工不良の防止
・かぶり厚さ確保
なども考えられますが、いずれも塩害環境での検討事項ではなく一般的な検討項目なので、候補としての優先度は低くなります。

参考

1) コンクリート標準示方書【維持管理編】(土木学会)

2) コンクリート技術の要点’21(公益社団法人 日本コンクリート工学会)

3) 塩害の劣化グレードと適用可能な補修工法との関係(一般社団法人 コンクリートメンテナンス協会HP)

4) 亜鉛めっき鉄筋を用いたコンクリート構造物の設計・施工指針(案)について(建設総合ポータルサイト けんせつPlaza)